卒団生インタビュー

 足立ジュニア吹奏楽団の団員たちは音楽技術の向上のみならず、活動の中で様々な力を身に着けています。違う学校・違う学年の仲間たちや卒団生と世代を超えた繋がりを持ち、大きく成長していきます。ジュニアでの経験を活かし、活躍する先輩方からお話を伺いました。

上野 拓人さん(会社員・音楽家)
Q1. 現在のご職業・活動内容等について、詳しく教えてください
 「会社員」と「音楽家」のデュアルキャリアで活動しています。
 家事代行サービスを提供する会社で「会社員」として2022年に入社、ベアーズウインドオーケストラという吹奏楽実業団にも同時に所属し、そこでの音楽 活動や個人の演奏活動・指導を主とした「音楽家」として同時に2つのキャリアを築いています。
 平日は9~18時で「会社員」として、平日の18時半~21時まで週3回、吹奏楽団の練習がある土日は「音楽家」として個人の演奏活動や指導に勤しんでいます。スケジュールとしてはかなりハードですが、安定が難しい音楽家というキャリアを、安定がある会社員というキャリアで支えることで、自分のやりたいことを実現できる働き方に魅力を感じ今の会社に就職しました。世間的にもデュアルキャリアという多様な働き方に昨今注目が集まっていますが、会社が吹奏楽の実業団を持ち「音楽家」としての活動を支援しているというのは、他では類を見ない存在かと思います。
 創立からまだ6年目と若い楽団ではありますが、3名からスタートした楽団も現在21名まで増え同じ志を持った仲間が集まり、コンクールへの出場や定期演奏会の開催、地域振興活動など活動の幅を広げています。私はまだ入社してわずか2年ではありますが、現在2度の昇格を経て「会社員」としてはマネージャーに、そして「音楽家」としては国内の主要なコンクールで上位入賞や優勝を果たし、また2023年10月には同楽団の楽団長に就任し、どちらのキャリアでもありがたいことに良い経験をさせていただいています。

Q2. 卒団後のジュニアとどのように関わっていますか

 毎年の定期演奏会での演奏や、数回ではありますが指導や合宿への同行もさせていただきました。 特に木管トレーナーでした畑澤先生とは個人的にも家族ぐるみでも懇意にさせていただいており、卒団後から今までずっとお世話になっています。

Q3. ジュニアに入って良かったと思うことを教えてください

 学校以外で同世代とのコミュニティがあり、その仲間と一緒に音楽をできたのは良い経験だったと思います。
 自分は兄2人がジュニアに入っていたので、その流れで何となくジュニアに入っていたというところがありますが…。
 もちろん他の習い事でも学校以外のコミュニティはできるのですが、大人数で何か一つものを作り上げる経験や醍醐味というのは、音楽以外ではなかなか味わえないと思います。
 ジュニア卒団後も中学校で吹奏楽部に入る人は多いですし、それだけみんな音楽を、吹奏楽を好きになるきっかけになっているのではないかなと思います。

Q4. 団員・OBとして活動するなかで得たスキルや経験などが、ご自身の現在に活かされていると感じる点はありますか?具体的に教えてください

 音楽的なスキルはもちろんのことですが、挨拶や返事といった基本的なマナーやルール、普段の練習や合宿など他者と生活をする、というような社会性を学べたことはとても役に立ちました。中学生にあがり部活動を始めた時にもそういったルールはありましたが、ジュニアで慣れていたので特に苦労することもありませんでしたし、社会人になった今でも求められるスキルだと思いますので、早い段階から学校以外の場でそのような教育を受けられたのは良かったと思います。

Q5. 団員・OBとして活動するなかで、一番印象に残っている思い出を教えてください

 6年生最後の定期演奏会がとても印象に残っています。
 自分が6年生の年はちょうど東日本大震災があった時で、3月に開催予定だった定期演奏会は中止となってしまいました。
 それでも先生方や友の会の皆様、また関係者の方々が尽力してくださり、延期をして卒団後に定期演奏会を開催することができました。
 定期演奏会が中止、と知った当時はあまりの悲しさから思わず泣いてしまい、「兄の影響で何となく始めたけど、こんなに涙が溢れてしまうくらい好きになっていたんだな」と実感したのを今でも覚えています。
 そんな思いがあって開催することができた演奏会というのは、今でも忘れられない思い出です。

Q7. 後輩に向けて一言お願いします

 仲間を大切にして音楽を好きになってくれたらそれが一番です!
 ジュニアでの短い時間を大切にして、思いっきり楽しんでください!

熊倉 未佐子さん(音楽家)
Q1. 現在のご職業・活動内容等について、詳しく教えてください

 クラリネットプレイヤーとして幅広く活動しています。
 ライブやコンサート等、演奏会での演奏、ブライダルイベントやパーティー等でのBGM演奏、スタジオレコーディング及び宅録(自宅での素材レコーディング)参加、大手テーマパーク内でのショー演奏など、演奏に関する仕事を展開。

 ジャズ理論を基盤とした編曲方法を用いて、編曲依頼をいただいた楽曲を編曲し納品したり、編曲した作品を自身で販売したりしています。権利の都合で出版社に販売を交渉することもあります。

 また、フリーでレッスン教室の運営もしています。店舗は持たずに、時間貸ししているスタジオ等を手配、または出張にて、自身の演奏スキルや理論知識を元に、個人及び団体向けに指導を行っています。

 他にも、音楽に関する記事を書いています。出版社等から依頼を受け、コラムや、商品の使用レビュー等の記事を書いたり、インタビュアとして演奏家にインタビューをして記事にしてもらったりしています。
 クラリネット専門誌にてジャズクラリネット初心者向けのレクチャー記事を担当し、毎月連載をしています。出版社を通さずに、自身で記事を書いてサイトに有料掲載することもあります。

 そして、TBSやケーブルテレビ足立の番組、ラジオやCMなどのメディア出演もしています。

Q2. 卒団後のジュニアとどのように関わっていますか

 社会人になってからは、先生のエキストラ(指導員代行)として団員の指導に携わる他、OGとして定期演奏会での演奏に参加しています。
 また、合宿に同行して団員の指導をしたり、演奏を一緒にしたこともあります。
 私がジュニア現役の頃、先生方や先輩方に感じたように、今度は私が、今の現役にとって良い刺激や影響を与えられる先輩であり指導者でありたいと考えています。
 これから、もっとジュニアに恩返しができれば嬉しいです。

Q3. ジュニアに入って良かったと思うことを教えてください

 まず、区内から集まる学外の良い友達が沢山できたことです。
 学業とは違うフィールドの広いコミュニティーの中で『音楽』という共通の趣味を持つ仲間と繋がり、自分の価値観を広げ、のびのびと交友関係を育む経験ができたのは、人格形成に良い影響を与えてくれたのではないかと思います。
 先生方のご指導がそれぞれの個性を伸ばし、音楽を通じて、意見を尊重し合える気の合う仲間と過ごせたことで、自分の好きなことをしっかり見つめることができました。

 それと、大好きなクラリネットに出会えたことです。
 私は、ジュニアに入ったおかげでクラリネットに出会えて、幸運なことに今こうして仕事として続けられています。
 もちろん、皆が卒団後もずっと楽器を続けているわけではありませんし、そこに優劣はありません。
 子供のうちに、音楽を通じて文化的活動ができたことは、将来のために視野を広げるとても良い経験であり、特別な財産だと感じています。
 音楽が人生を豊かにしてくれると信じています。

Q4. 団員・OBとして活動するなかで得たスキルや経験などが、ご自身の現在に活かされていると感じる点はありますか?具体的に教えてください

 まず、音楽の要素を含むすべてのことです。
 子供のうちにクラリネットに出会い、沢山練習しておいたおかげで今の活動や生活につながっているからです。
 楽譜の読み方、クラリネットの吹き方、楽器の扱い方、音楽感性、集団音楽の難しさや楽しさ、ステージマナー、他にも沢山あります。

 それから、集団行動とチームワークを築くスキルや経験です。
 吹奏楽においてクラリネットというパートはチームワークが肝心です。
 団体音楽は、皆でひとつの音楽を形にする喜びを分かち合えるのが魅力ですが、音楽的にも人間的にも集団行動の足並みが揃わないといけません。
 私は、初めからクラリネットが上手かったわけではないので、仲間に追いつきたい一心でいつもクラリネットの練習を頑張りました。

 そして、夢を掴む情熱や努力もその時に覚えました。
 できないことが努力次第でできるようになる喜びを知り、悔しさをバネに、最後までやり切る力がついたのはこの経験のおかげです。

 他には、団員時『サブ・インペグ』を経験しました。
 資質がまるでなく、他人に任せきりでまるで仕事のできない名ばかりの肩書きでした。今でも恥ずかしいですが、それで良いのです。社会に出る前にそれを知ることができて良かったと思っています。
 音楽はひとりではできません。裏方から表方まで沢山の支えがあって、リスナーの耳に届いて初めて音楽は成立します。
 現在は自営業ということもあり、裏方も表方もすべてひとりでこなさなくてはなりません。
 人を支える苦労も人を束ねる苦悩も、今の仕事についてまわるものですので、資質が無い分、人一倍努力するようにしています。その分、仕事が成功した時の達成感は最高に良いものです。

 「まずは自分から動くこと」「感謝の心を忘れないこと」

 『サブ・インペグ』の経験のおかげで、人として大切なことを学びました。

Q5. 団員・OBとして活動するなかで、一番印象に残っている思い出を教えてください

 仲間との練習や本番、合宿、遠足はどれも楽しいものでしたが、中でも印象に残っているのは、合宿です。
 音楽に直接的な関係は無いかも知れませんが、レクレーションや食事、睡眠など、生活を共にし、沢山の時間を共有したことで、仲間の意外な一面を知れたり、距離が縮まったり、沢山の思い出が作れました。
 そういった経験の中でチームワークが向上し、結果的に音楽にも良い影響を与えたのではないかと思います。

Q7. 後輩に向けて一言お願いします

 足立ジュニア吹奏楽団は、音楽を通じて仲間と沢山の経験ができるところだと思います。
 皆で楽しく力を合わせて、音楽を奏でる喜びをぜひ味わってください。